こんにちは。福田泰裕です。
2020年4月、「ABC予想が証明された!」というニュースが報道されました。
しかし多くの人にとって、
ABC予想って何?
という反応だったと思います。
今回は、このABC予想の何がすごいのか、何の役に立つのかについて解説していきます。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
目次
ABC予想とは?
この記事を読む前に、ABC予想について知っておかなければなりません。
証明まで理解することは一般人には絶対にできませんが、「ABC予想が何なのか」は頑張れば理解できると思います。
ABC予想についてよく分からない…という方は、こちらの記事からご覧ください👇
まとめておくと、次のようになります。
【弱いABC予想】
任意の正の数 \(\epsilon\) に対して、\(a+b+c\) を満たす互いに素な自然数の組 \((a,b,c)\) のうち、
$$c>\mathrm{rad}(abc)^{1+\epsilon} $$
を満たすものは高々有限個しか存在しない。
この弱いABC予想と同値(同じ意味)であるのが、もう1つの強いABC予想です👇
【強いABC予想(弱いABC予想と同値)】
任意の正の数 \(\epsilon\) に対して、\(\epsilon\) に依存する数 \(K(\epsilon)>0\) が存在し、\(a+b+c\) を満たす互いに素なすべての自然数の組 \((a,b,c)\) に対して
$$c<K(\epsilon) \cdot \mathrm{rad}(abc)^{1+\epsilon} $$
が成り立つ。
京都大学の望月教授が、27年間解き明かされなかった問題を証明して話題になったのです。
ABC予想が何の役に立つの?
「ABC予想が証明された!」というニュースを聞いて、
ABC予想って、何かの役に立つの?
と思われた方も多いでしょう。
実はこのABC予想が証明されることは世界中の数学者の願いだったのです。
なぜなら「もしABC予想が正しいならば、様々な難しい問題が解決するから」というものでした。
フェルマーの最終定理
数学の世界には、ABC予想と同じように多くの未解決問題があります。
その中で最も有名なのが、17世紀に生きたフランスの数学者フェルマーが残した「フェルマーの最終定理」です。
【フェルマーの最終定理】
3以上の自然数 \(n\) において、
$$x^n +y^n =z^n$$
を満たす自然数の組 \((x,y,z)\) は存在しない。
\(n=4\) のときの証明はフェルマー自身が書き残していました。
\(n=3\) のときの証明は、1753年にオイラーが行いました。
\(n=5\) のときの証明は、1825年にジェルマン、ディリクレ、ルジャンドルの3人の数学者によって成し遂げられました。
しかし、自然数 \(n\) は無限に存在するため、この方法で1つずつ証明していても終わりがありません。
そして1995年。
アンドリュー・ワイルズによって完全な証明が発表されました。
なんとフェルマーの死後330年も経過していました。
このように、フェルマーの最終定理は一見単純に見えるのですが、その分とても奥が深く、証明には多くの時間がかかりました。
ABC予想でフェルマーの最終定理が簡単に証明できる
世界中の数学者がABC予想の証明を待ちわびていた理由の1つが、ABC予想とフェルマーの最終定理との関係です。
【強いABC予想(弱いABC予想と同値)】
任意の正の数 \(\epsilon\) に対して、\(\epsilon\) に依存する数 \(K(\epsilon)>0\) が存在し、\(a+b+c\) を満たす互いに素なすべての自然数の組 \((a,b,c)\) に対して
$$c<K(\epsilon) \cdot \mathrm{rad}(abc)^{1+\epsilon} $$
が成り立つ。
この強いABC予想では、\(\epsilon=1\) 、\(K(\epsilon)=1のときにも成り立つというのです👇
【強いABC予想 \((\epsilon=1,K(\epsilon)=1)\)】
\(a+b+c\) を満たす互いに素なすべての自然数の組 \((a,b,c)\) に対して
$$c<\mathrm{rad}(abc)^2 $$
が成り立つ。
この強いABC予想が本当ならば、$$a=x^n,b=y^n,c=z^n$$とおくことで、フェルマーの最終定理は次のように証明できます👇
【フェルマーの最終定理の証明】
3 以上の自然数 \(n\) に対して、\(x^n+y^n+z^n\) を満たす互いに素な自然数の組 \((x,y,z)\) に対して
$$z^n<\mathrm{rad}(x^n \cdot y^n \cdot z^n)^2 $$
が成り立つ。
$$\mathrm{rad}(x^n \cdot y^n \cdot z^n)^2 \leq \mathrm{rad}(xyz)^2 \leq (xyz)^2 \leq (z^3)^2 = z^6 $$
であるから、
$$z^n<z^6$$
となる。
よって、\(n \geq 6\) のとき、\(x^n+y^n+z^n\) を満たす互いに素な自然数の組 \((x,y,z)\) は存在しない。
\(n=3,4,5\) のときに自然数の組が存在しないことはすでに証明されているので、\(3\) 以上のすべての自然数において自然数の組は存在しない。
自然数 \(n\) が無限にあったために証明が困難だったフェルマーの最終定理が、こんなにもスッキリ証明できてしまうのです!
世界中の数学者がABC予想の証明を心待ちにしていた理由が分かってもらえましたでしょうか。
もちろん、ABC予想が使えるのはフェルマーの最終定理だけではありません。
Wikipediaに詳しく紹介されているので、ご覧ください👇
ABC予想 – Wikipedia
まとめ:しかし、ABC予想の証明はもっと困難だった
いかがでしたでしょうか。
フェルマーの最終定理の証明を簡素化できる!ということで世界中の数学者たちが証明されることを心待ちにしていたABC予想ですが、このABC予想の証明はさらに困難なものでした。
どれほど困難であったかは、こちらの記事をご覧ください👇
フェルマーの最終定理やABC予想は、問題が単純で理解しやすいからこそ多くの数学者の心を射止めているのだと思います。
他にも数学の未解決問題があるので、興味をもった方は調べてみてください!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
質問やご意見、ご感想などがあればコメント欄にお願いします👇
コメント
a+b+cを満たす→a+b=cを満たす
x^n+y^n+z^nを満たす→x^n+y^n=z^nを満たす
でしょうか?
「edityでhtmlを公開する」は大変参考になりました。
細かい点で恐縮なのですが、ABC予想の説明中a+b+cではなく、a+b=cの誤りではないかと思います。ほかの解説が楽しいので是非調べていただきたくコメントさせていただきました。
また、役立つ情報をよろしくお願いします。楽しみにしています。