【場合分けで思考力を鍛える】0で割る?文字式を解くときの注意点

面白い数学

こんにちは。福田泰裕です。

中学の数学と高校の数学での大きな違いは、『場合分け』があるところです。
中学の数学は答えまで一本道であるのに対し、高校の数学は様々な場合を考えて解かなければなりません。

でも実は、場合分けを考えるところに数学の面白さがあるのです。

今回はその場合分けの大切さが分かる問題を例に挙げて、解説していきます。

最後まで読んでいただけると嬉しいです。

目次

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文字式の基本「0で割ってはいけない」

おそらく、小学校で「0で割ってはいけません」と習ったと思います。

これは文字式を解くとき最も基本となる場合分けです。
両辺を何かで割るときは、その数が \(0\) でないことを確認しなければいけないのです。

【問1】次の方程式を解け。

$$ 3x = 5$$

このような問題の場合は、両辺を \(3\) で割ると答えがでます。

【問1の答え】

両辺を \(3\) で割って、

$$x = \frac{5}{3}$$

文字式の注意:0で割らない文字式

それでは、次の問題はどうでしょう?

【問2】次の \(x\) についての方程式を解け。

$$3x = a$$

さて、\(a\) という文字が出てきました。
しかし、この問題を解くための操作は、両辺を \(3\) で割ることです。
\(a\) がどんな値であっても、\(3\) で割るしかありません
つまり、場合分けの必要はありません。

【問2の答え】

両辺を \(3\) で割って、

$$x = \frac{a}{3}$$

文字式の注意:0で割るかもしれない文字式 その1

どんどんいきましょう👇

【問3】次の \(x\) についての方程式を解け。

$$ax=5$$

同じように \(a\) という文字が出てきました。
しかし、今回は【問2】とは少し違います。

何も考えずに、

【問3の間違った解き方】

両辺を \(a\) で割って、

$$x = \frac{5}{a}$$

と書いてしまうとバツです。

この問題を解くための操作は、両辺を \(a\) で割ることです。

両辺を \(a\) で割るためには、\(a\) が \(0\) でないことが条件です。
\(a\) が \(0\) でないならば、両辺を \(a\) で割っても良いのです。

それでは、\(a\) が \(0\) のときはどうなりますか?

\(a=0\) のとき、方程式は

$$0 \cdot x = 5$$

となります。
\(x\) に何を代入しても、
\(0 \cdot \underline{1} = 0\)
\(0 \cdot \underline{100} = 0\)
\(0 \cdot \underline{(-10000)} = 0\)
‥‥‥
左辺は \(0\) のままなので、どうやっても「 \(=5\) 」とはなりません。
つまり \(a=0\) のとき、等式を満たす \(x\) は存在しません

【問3の答え】

( i ) \(a \neq 0 \) のとき
両辺を \(a\) で割って、

$$x=\frac{5}{a}$$

( ii ) \(a = 0\) のとき

$$0 \cdot x = 5$$

となり、これを満たす実数 \(x\) は存在しない。

( i )( ii ) より、

\begin{cases}
a \neq 0 のとき、x=\displaystyle\frac{5}{a}\\
a = 0 のとき、解なし
\end{cases}

「式の中に \(a\) があるか」ではなく、「両辺を何で割るのか」が大事になってくるわけです。

文字式の注意:0で割るかもしれない文字式 その2

それでは、次の問題はどうでしょう?

【問4】次の \(x\) についての方程式を解け。

$$ax=0$$

左辺に \(a\) があるから、\(a=0\) と \(a \neq 0\) の場合を考えれば良いんじゃないの?

というのは正しい考えです。
それでは、【問3】との違いは分かりますか?

まず \(a \neq 0\) の場合は、そのまま両辺を \(a\) で割れば問題ないでしょう。

次に、\(a =0\) の場合を考えてみましょう。
このとき、

$$ 0 \cdot x = 0 $$

となります。

\(x\) に適当に値を代入してみると…
\(0 \cdot \underline{1} = 0\)
\(0 \cdot \underline{100} = 0\)
\(0 \cdot \underline{(-10000)} = 0\)
‥‥‥

なんと、\(x\) にどんな実数を代入しても「 \(=0\) 」です!
つまり、\(x\) には何を代入しても良いということなのです!

【問4の答え】

( i ) \(a \neq 0 \) のとき
両辺を \(a\) で割って、

$$x=0$$

( ii ) \(a = 0\) のとき

$$0 \cdot x = 0$$

となり、これはすべての実数 \(x\) に対して成り立つ。

( i )( ii ) より、

\begin{cases}
a \neq 0 のとき、x=\displaystyle\frac{5}{a}\\
a = 0 のとき、すべての実数
\end{cases}

先ほどの【問3】では右辺が「 \(=5\) 」だったため「解なし」となりましたが、右辺が「 \(=0\) 」の場合は答えが「すべての実数」に変わるのですね!

文字式の注意:まとめの問題

それでは、総まとめの問題です。

【問5】次の \(x\) についての方程式を解け。

$$ax=b$$

文字が2つある!

なんて、驚かないでください!
大事なのは、「両辺を割るとき、\(0\) か、\(0\) でないかを考える」ことです。
右辺に「 \(=b\) 」と付いていますが、まだ気にしなくて大丈夫です。

まず、やりたい操作は「両辺を \(a\) で割る」ことです。
そのため、\(a \neq 0\) ならば、両辺を \(a\) で割って終了です。

次に、\(a=0\) の場合も考えてみましょう。

\(a=0\) のとき、式は

$$ 0 \cdot x = b $$

となります。
ここで初めて、\(b\) について考えなければなりません。

上の式は、\(x\) に何を代入しても左辺は \(0\) のままです。

もし \(b \neq 0\) ならば、絶対にイコールは成り立ちません。
しかし \(b=0\) ならば、絶対にイコールが成り立ちます。

このことに気を付けて、答えを書きましょう。

【問5の答え】

( I ) \(a \neq 0 \) のとき
 両辺を \(a\) で割って、

$$x=0$$

( II ) \(a = 0\) のとき

$$0 \cdot x = b$$

 ( i ) \(b \neq 0\) のとき

$$ 0 \cdot x = b \neq 0$$

  となり、これを満たす実数 \(x\) は存在しない。

 ( ii ) \(b=0\) のとき

$$0 \cdot x = 0$$

  となり、これはすべての実数 \(x\) に対して成り立つ。

( I )( II ) より、
\begin{cases}
a \neq 0 のとき、x=\displaystyle\frac{b}{a}\\
a = 0 , b \neq 0 のとき、解なし \\
a = 0 , b = 0 のとき、すべての実数
\end{cases}

\(a \neq 0\) のときは \(b\) について考えなくてよいのに、\( a=0\) のときは \(b\) の値を考えなくてはいけないというのが、少し難しいポイントです。

まとめ:0で割る文字式で思考力を鍛えよう!

いかがでしたでしょうか。

ただ \(a\) で割るだけの文字式でも、様々なパターンの場合分けがあります。
これらは丸暗記するものではなく、その都度考えていくものです。

文字式を解くときは勝手に自分の都合の良いように考えず、様々な場合を考える必要があります。
今回の \(0\) で割るかもしれない文字式は、場合分けの基本です。

様々なパターンの問題を解いて、思考力を鍛えましょう!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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