こんにちは。福田泰裕です。
授業を行うために教科書や問題集をコピーしたり、文化祭を盛り上げるポスターを描くために有名なキャラクターを使用したりしていませんか?
これらの行為は、学校現場では日常的に行われていることです。
しかしそんなときに頭をよぎるのは、
著作権、大丈夫なのかな‥‥‥?
という疑問です。
法律を破ってしまえば、最悪の場合処分されてしまうかもしれません。
しかし、学校での教育活動は著作権法第35条により例外が適用されます。
一定の条件を満たせば、著作者の許可を得ることなく複製することができるのです。
ただ、この著作権法第35の例外規定は条文だけを読んでもよく分かりません。
今回はこの著作権法第35条の例外規定の実例集をクイズ形式でご紹介します。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
目次
まず、著作権法第35条の例外規定はご存じでしょうか。
この例外規定については、こちらの記事で詳しく説明しています。
まだ読まれていない方は、ぜひ読んでみてください👇
それでは、この著作権法第35条の例外規定について、クイズ形式で解説していきます。
①…著作物である。
著作物かどうかの基準は、著作者の個性が発揮されているのかということです。高度なものであるか、文化的に価値があるかはまったく関係ありません。
②…どちらともいえない。
完璧な白地図であれば、創作性は認められないので著作物とは言えません。
しかし、部分的に地名や施設名が記載されていたり、その選択や表記の方法に個性が認められる場合や、美術的要素が含まれている場合には著作物と言えるかもしれません。
許諾を得る必要がある。
学校の成果をまとめたものであるから、創作性が認められます。
ウェブページに掲載することは公衆送信権の対象になるので、著作権者である新聞社へ許諾を得る必要があります。
「授業目的」でもないため、第35条の例外規定には該当しません。
該当しない。
学校内で行われるだけでは、例外規定に該当しません。
第35条の例外規定は、「教育を担任する者」が「授業の過程で使用する」場合に認められます。
PTAの会合はこの適用要件を満たしていないため、例外規定には該当しません。
①…認められない。
大学等の高等教育機関では、単位認定の対象となる教育活動が「授業」と認められます。大学のサークル活動は単位認定とは関係ないため、「授業」とは認められません。
②…認められる。
生徒の自宅学習用の教材が授業と関連なく行われるのであれば、「授業の過程」とは認められません。しかし、授業と関連性がある場合には「授業の過程」と認められます。
③…認められない。
任意参加の課外授業は「授業の過程」には該当しません。しかし、授業担当者が理解度の遅い生徒を対象に補習授業を行う場合には「授業の過程」と認められることもあります。
該当しない。
著作権法第35条の例外規定に該当するためには、「授業の過程における使用」であることが必要です。授業が終わった後はこの目的を達成しており、校内LANサーバに保存して閲覧できるようにするという目的は、「授業の過程に使用するため」とは考えられないため認められません。
該当しない。
教科研究会での使用は「授業の過程」ではないため該当しません。
しかし、授業で使用することを目的として複製した他人の著作物を、教科研究会で使用することは認められる可能性があります。
著作権法第35条の例外規定を受けて複製された著作物であっても、その目的以外で公衆に提示した場合は認められません。
授業目的で複製したものを授業の前に少数の教員で行う教科研究会で提示することは「公衆への提示」とは言えないため、複製が認められます。
ただし、授業目的での複製は「必要と認められる限度」(生徒数+教員数)で認められているため、教科研究会での配布用に余分に複製することは認められていません。
従って、教科研究会では複製物を提示して閲覧してもらうだけに留めておく方が無難だと思われます。
該当しない。
学校その他の教育機関は、「教育を担任する者」は「授業の過程」で使用することを目的とする場合は、例外的に複製できることが認められています。
しかし、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではない。」と規定されています。
問題集のように、生徒が自ら購入することが期待されている教材を、教師が1部だけ購入してそれを複製して生徒に配布する行為は、たとえ授業が目的だとしても、出版社の売上に直接的な影響を与えるものなので認められません。
どちらともいえない。
「授業の過程」であれば、「必要と認められる限度」で複製が認められています。
しかし、部数が多い場合は「著作権者の利益を不当に害する」可能性があります。
ガイドラインによると、1クラスの人数は概ね50名程度を目安としているため、200名を対象とするのは多すぎるために利益を害する可能性があります。
しかし、例えば書籍のうち1ページだけを複製して資料に利用したり、絵画を解像度の低い白黒印刷で複製したりした場合、それが利益を不当に害する行為とは考えられません。
そのため、複製の部数が多いからといって直ちに著作権者の利益を害するとは言えません。
人数だけでなく、他の要素も考慮して判断しなければならないのです。
該当しない。
著作権法第35条第2項には授業の公衆送信についての例外規定が書かれており、
公表された著作物については、前項の教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第38条1項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合は、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではない。
著作権法 第35条第2項
とあります。
インターネットでの配信は認められていますが、「当該授業を同時に受ける者」に限定されています。
授業がリアルタイムで配信されるならば該当しますが、録画した動画を後日配信する場合は該当しません。
該当しない。
これも、著作権法第35条第2項によると、
公表された著作物については、前項の教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第38条1項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合は、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではない。
著作権法 第35条第2項
とあります。
「当該授業を直接受ける者に対して複製物を提供する場合」に公衆送信が可能であると書かれています。
つまり、授業を直接受ける者がいない場合は、そもそも複製することが許されていないということです。
いかがでしたでしょうか。
今回の著作権法第35条の例外規定クイズでは、意外な結果が多かったと思います。
授業を行うためには著作物の複製は避けて通れません。
著作権法第35条の例外規定を正しく理解して、ルールを守って複製していきたいですね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
今回の記事で、1人でも多くの方に著作権について関心を持ってもらえると嬉しいです。
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